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注意をうながす手
2024.06.10

法律を活用して社内のトラブルを防ぐにはどうすれば良いですか?(予防法務の具体例と、臨床法務・戦略法務との違いを解説)

予防法務って何ですか?

健全な会社経営を行うには、先手を打って法令に沿った体制・運用を構築しておくことが大切です。予防法務を活用して、社内のトラブルを防ぐにはどうすれば良いですか?という社長のご質問に対し、弁護士が会話形式でお答えします。

 

T社長
T社長
先生、社内のトラブルを防ぐにはどうすれば良いですか?

なるほど、今日は『予防法務』の相談ですね。
小野弁護士
小野弁護士

T社長
T社長
聞きなれない言葉ですね。予防法務って何ですか?

予防法務っていうのは、要するに『トラブルが起きないよう、あらかじめ対策しておくこと』を言います。

たとえば、T社長の会社が、ほかの会社と何か商売をするとき、契約書を交わしますよね。その契約書に自分の会社がしたいことが書かれていなかったり、不利な条件になっていないかどうかをしっかりチェックしていないと、後になって「取引が思っていたものと違うから、契約内容を変えて欲しい」と相手に言っても、「無理です」って言われてしまうこともあります。

また、従業員がたくさんいる会社では、従業員がうっかり社外に大切な情報を漏らしてしまうなどの事件を、新聞やニュースで目にすることもありますよね。

ですから、こういったトラブルが起きないように、契約書をきちんとチェックしたり、社内ルールを確認したりするんです。
小野弁護士
小野弁護士

T社長
T社長
そうです!そういうトラブルが起きないようにしたいんです。

予防法務をしっかりやっておけば、トラブルの回避に加えて、もし何かトラブルが起きても、あらかじめ対策をしているから、すぐに対応できるし、大きな問題になるのを防げますよ。さらに、これらをきちんとすることは、会社の守りを強くすることにつながるので、ビジネスを思い切って進めることでき、会社にとって心強い味方になるんです。
小野弁護士
小野弁護士

T社長
T社長
もう少しくわしく教えてください。

もちろんです。予防法務には、トラブルを回避したり、また、トラブルに遭ってもそのダメージを軽くするといった役割があります。

ですから、会社が安心で気持ちのいいビジネスをしていくためには、予防法務は欠かせません。
小野弁護士
小野弁護士

具体例をあげると、契約書のチェックがそうですね。もし契約に不利な条件があれば、それを変えてもらうよう交渉することで、後々のトラブルを防いだり、トラブルを見越して準備しておくことができます。契約は相手との約束なので、後になって約束の内容を変えようとしても難しいことが多いんですよ。

また、社員の残業時間を適切に管理するなど、労働法違反にならないように労務管理を行うことで、社内トラブルや、行政からお叱りを受けないようにすることも、具体例として挙げられますね。
小野弁護士
小野弁護士

その他にも、トラブルが起きてしまうと、会社の評判が落ちることもあります。たとえば、他社から訴えられたことがニュースになると、会社のイメージが下がってしまい、売上が減ることもあります。また、株主になりたいと思う外部の人が減って、資金調達が難しくなることもあります。このようなトラブルにならないように、予防法務があるんです。
小野弁護士
小野弁護士

臨床法務・戦略法務とは

会社の法務には、『予防法務』の他にも、『臨床法務』、『戦略法務』という2つの大切なポイントがあります。まず、予防法務とは、病気に例えると、風邪をひかないように予防接種をするようなもので、トラブルが起きないようにするための手段です。これに対して、臨床法務とは、病気になった後の治療のようなもので、すでにトラブルが起きてしまった後に、それを解決するための手段になります。そして、戦略法務とは、これらとは少し違って、会社がビジネスを広げて、利益を増やすために、法律をうまく活用することをいいます。たとえば、新しい商品について特許を取得して、ライバルたちに差をつけて会社の儲けを増やす、といったことです。これらの3つの法務を、上手に連携させることで、予防法務の効果をより会社の望むものへと高めていくことができます。


 

予防法務には、他にもメリットがありますか?
(コンプライアンス体制強化の重要性)

その他にも、予防法務は、会社のコンプライアンス体制を強化することにもつながるんですよ。
小野弁護士
小野弁護士

T社長
T社長
コンプライアンスって何ですか?

コンプライアンスとは、簡単に言うと、会社が法律やルールを守ることです。
小野弁護士
小野弁護士

たとえば、契約書をチェックして、下請法などの法律に違反しないようにしたり、また、個人情報保護法に沿って、社員が個人情報を適切に扱うように指導したり、業務マニュアルを整備することですね。
小野弁護士
小野弁護士

要するに、コンプライアンス体制を強化できると、会社の社会的な信用を保ちながら、安全にビジネスを進めることができるんですよ。これにより、会社は着実に成長を見込むことができ、未来に向かって会社の価値をもっと良くしていく土台を作れます。
小野弁護士
小野弁護士

T社長
T社長
なるほど。なんで予防法務が必要なのか、メリットまでよく分かりました。

それはよかったです。
小野弁護士
小野弁護士

予防法務って、何をすれば良いですか?
(予防法務の具体例とおすすめ)

T社長
T社長
では、会社としては、具体的にどういったことをすればよいのでしょうか?

たとえば、次のようなことです。
小野弁護士
小野弁護士

契約書のチェック

1つ目は、契約書を確認することですね。大事なのは、自社に不利なことが書いてないか、もしトラブルがあった時にどう対応するかをしっかり確認することです。ビジネスにはスピードも求められますので、この段階ですべてのリスクを完璧に取り除くのは難しいこともありますが、ここでしっかりチェックしておくと、会社のリスクを減らせます。
小野弁護士
小野弁護士

適切な社内ルールの作成

2つ目は、法律に違反しないように、会社のルールを作ったり、見直したりすることも大事です。

たとえば、SNSの使い方や、ハラスメントを防ぐルール、契約書の管理方法など、会社の経営のためのさまざまなルールを作ります。
小野弁護士
小野弁護士

アイデア・デザインなどを守る

3つ目は、会社の大事なアイデアやデザインなどを守る業務も忘れてはいけません。

たとえば、自社の特許やデザインが他の会社に勝手に使われないようにしたり、逆に、他人の特許を間違って使わないように気をつけたりします。これを怠ると、会社の売上が落ちてしまったり、他の会社からクレームを入れられてしまうこともあります。
小野弁護士
小野弁護士

社員の働くルール

4つ目は、社内の人事や労務などのルールが、法律を守れているかをチェックすることですね。

たとえば、有給休暇の取り方などを法律に合わせて管理します。法律に違反すると、会社や従業員にトラブルが起こることもあるので、これも大切です。
小野弁護士
小野弁護士

株主総会のサポート

5つ目は、株主総会をスムーズに進めるための準備です。法律に従って開催する方法や、質問が来た時の答え方を準備します。株主総会で問題が起きないように、事前にしっかり準備することが重要です。

株主は、会社にお金を出してくれている人たちですので、株主に親切に対応することは、会社の経営を安定させることにもつながります。
小野弁護士
小野弁護士

官公庁への問い合わせ

6つ目は、会社のビジネスが法律に合っているかを、国や市に問い合わせる業務です。例えば会社の新規事業が、法律に違反しないかどうかが、分かりにくいこともあります。このようなときは、自分たちだけで決めずに、行政にちゃんと確認して進めるようにすると、後のトラブルを回避したり、また、トラブルから受ける被害を小さくできます。
小野弁護士
小野弁護士
グレーゾーン解消制度とは

「グレーゾーン解消制度」とは、産業競争力強化法に基づいて、会社などが安心して新しい事業活動を行えるように、具体的な事業計画にそって、あらかじめ法律や規制が適用されるかどうかを、行政に確認できる制度です。

リンク:グレーゾーン解消制度に関するウェブページ(経済産業省)

予防法務は社内の誰に任せるのが良いですか?
(法務担当者に求められる適性)

T社長
T社長
わが社で予防法務をするにも、社内のどういった人に任せればよいかイメージがはっきりと沸かないなぁ。なにかアドバイスもらえないでしょうか?

もちろんです。
小野弁護士
小野弁護士

一般的には、①経験、②知識、③柔軟性という3つのポイントが、法務担当者に求められます。順に説明していきましょう。
小野弁護士
小野弁護士

経験

予防法務というのは、会社がこれから遭遇しそうな問題やリスクをあらかじめ見つけて、対策を考えることです。このためには、会社の法律上の大事なポイントをしっかり理解している必要があります。したがって、会社の法務経験が豊かであることは大切ですね。
小野弁護士
小野弁護士

知識

また、たとえば、T社長の会社が上場を目指していたり、自分の会社の株を購入したり、また金融商品で会社の資産を運用するようなケースでは、専門的な法律にも対応する必要もあります。なので、それらの分野の法律について深く理解し知識をもっていることが求められます。
小野弁護士
小野弁護士

柔軟性

法務担当者は、会社の活動(取引やルールの管理など)を全体的に見渡し、さまざまな角度からリスクを考える必要があります。想像力を使って、起こりうるリスクを見つけ出し、それぞれのリスクにどう対応するかを考える力が求められます。
小野弁護士
小野弁護士

これらのポイントから、法務担当者を選んで任せると、予防法務を着実に進めることができると思いますよ。
小野弁護士
小野弁護士

予防法務を弁護士に相談することはできますか?

T社長
T社長
予防法務を社外の弁護士さんに相談することもできるんでしょうか?

もちろんです。仮に、会社の法務担当を適切な社員に任せても、たまには『これは専門家に聞いたほうがいいかな』という疑問が出てくると思います。そんなときに、外部の弁護士がいると、疑問に対してちゃんと調べて、すばやく答えてくれます。

また、新しい法律が制定されたり、すでにある法律が改正されるときなど、自分の会社だけでは『会社として何をすればよいのか』を調べるのが難しい場合もあります。そんなときにも、外部の弁護士にお願いしておくと、会社の代わりにきちんと調べて教えてくれるので、とても安心です。

このように外部の専門家にも協力してもらうと、会社は新しいビジネスにもっと挑戦できるようになるので、会社の利益にもつなげることができます。
小野弁護士
小野弁護士

T社長
T社長
なるほど、お互いに手を組んで協力することが、会社を法的な問題やトラブルから守るためにとても大事なんですね。

そうですね。このように、会社の法務担当者と外部の弁護士とは、それぞれ違う役割があるんです。普段から顧問の弁護士さんとよく話をして、相談したいことをしっかり共有しておくと、スムーズな予防法務を進めることができます。
小野弁護士
小野弁護士

AIを予防法務に使うことはできますか?

T社長
T社長
最近、AIを使えば法務が簡単になるという話をよく聞きます。実際のところ、どうなんでしょうか?予防法務にAIを使って、企業のリスクを減らすことができますか?

確かに、AIを使うと、契約書をチェックする時に、AIがリスクのある文言や、足りない条文をすぐに見つけてくれます。これって、契約書を読むのが大変なときにすごく助かるんですよ。
小野弁護士
小野弁護士

でも、AIを使う人が法律に慣れていないと、AIに対する法的な質問がふわっとしてしまい、そうするとAIからの提案も多くなりすぎて、結局は活かしきれないこともあります。

また、特に日本のように、紛争はできるだけ避けて、お互いにとって公平な取引を大切にする文化のもとでは、AIの提案をそのまま使うのではなく、目の前のビジネスの内容、相場、相手の立場などを考えて、お互いの利益を調整することが、大切なポイントでもあります。もっとも、この判断には、法的に豊かな経験・知識が必要になります。

ですから、会社でAIを使うにしても、AIも詳しい弁護士などの外部の専門家と協力しながら、ビジネスを進める方が、安心だと思いますよ。
小野弁護士
小野弁護士

まとめ

これまでお話したように、社内のトラブルを防ぐには、予防法務が大切です。予防法務は、会社をトラブルから守るための大切な準備なので、会社が安心して成長していくためには欠かせません。ですから、会社で適切な法務担当者を選び、外部の弁護士さんのサポートを受けながら、しっかりと進めていくことが大切です。
小野弁護士
小野弁護士

T社長
T社長
よく分かりました。今日はありがとうございました。

いつでも相談してください。T社長の会社にとって最適な予防法務の進め方を、一緒に考えましょう!
小野弁護士
小野弁護士

■この記事の内容は、「わかりやすさ」と、「要はどうすればいいか」にフォーカスして作成しています。そのため、法律の教科書的な内容とは違う場合があります。このような目的をご理解のうえ、お読みいただければと思います。社長の実際のお悩みを解決するために、ぜひ専門家にご相談ください。

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WRITER
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
企業顧問を専門とし、社長からの相談に、法務にとどまらずビジネス目線でアドバイスを行う。
企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約書をレビューする「契約審査サービス」を提供している。
また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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