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2024.06.06

取締役会を設置するメリットは何ですか?(会社のビジネスをスムーズにする決議の事項や方法について解説)

取締役会って何ですか?
(取締役会の設置及びその設置のメリット)

取締役会における承認や決議って何ですか?という社長のご質問に対し、弁護士がお答えします。取締役会の決議事項や決議の方法の流れ、決議と報告との違いなどをわかりやすく解説しています。

取締役会とは?

T社長
T社長
先生、取締役会を使って、会社のビジネスをスムーズにできますか?

なるほど。今日は『取締役会』の相談ですね。
小野弁護士
小野弁護士
T社長
T社長
はい。でも、取締役会がどういった仕組みなのか、設置(設定) するメリットはなんなのか、よくわかりません。

大丈夫です!それでは、まずは取締役会の概要を解説 していきますね。
小野弁護士
小野弁護士

取締役会は、会社の業務執行の意思決定ができる機関のことです。取締役会は、株主総会で選ばれた取締役3名以上で構成されます。また、取締役会を設置し、法令によって設置を義務付けられている株式会社は『取締役会設置会社』として、会社法で権限や手続き、運営方法についても定められています。
小野弁護士
小野弁護士
T社長
T社長
取締役会を設置するためには、3名以上の取締役が必要なのですね!取締役会は必ず設置しなければならないんでしょうか?

取締役会は、任意で設置している株式会社と、会社法で設置を義務付けられている株式会社がありますよ。例えば、株式が証券取引所に上場している公開会社は、会社法で取締役会の設置が義務付けられていますよ。 (会社法327条1項参照)。また、上場していない株式会社でも、定款に株を譲渡する際、会社の承認が必要と書いていない場合は取締役会の設置が必要になります。
小野弁護士
小野弁護士

 

取締役会を置くメリット/デメリットについて

T社長
T社長
そうすると、取締役会を必ず置かなければいけないわけではないんですね。法律で取締役会の設置の必要性が定められていない場合、それでも取締役会を設置するメリットってあるんでしょうか?
取締役会を設置するメリットですね。会社経営をしていく中で、重要な決断をする場面は多々あると思います。

・融資を受けるかどうか、またいくら受けるか
・執行役員や支店長といった重要なポジションに就く人物をだれにするのか、また解任するのか
・支店を新しく設置するのか、またどこに設置するのか

こういった業務執行に必要な決定をする場面では、慎重に決定することも必要かもしれませんが、経営面では迅速な意思決定が必要不可欠ですよね。
小野弁護士
小野弁護士

T社長
T社長
はい。私は、経営を左右する決断をする場面では、常に迅速に意思決定をしてきました。慎重に検討するよりも、経営者なら勝機を逃してはいけないという考えのもとです。

さすがT社長ですね。しかし、例えば今後事業が拡大し、株主が増えた場合、T社長の強みである迅速な決断が制限されるリスクがあるんです。
小野弁護士
小野弁護士

T社長
T社長
事業が拡大して、いよいよというときに迅速な決断が制限されるんですか?それはなぜでしょうか?

会社法295条1項で は、『株主総会は株式会社の組織・運営・管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。』と規定されています。簡単に言うと、取締役会を設置しないと、会社の一切を株主総会で決めるということですね。

ですが、事業の拡大に伴い、株主を広く募集することにより、株主が増えていくと、事業に携わらない一般の方が株主となるケースが増えて、株主の数が多くなってしまう可能性もありますよね。

このように株主が多数に上る状況で、会社の重要な意思決定を株主総会で行おうとすると、株主総会の開催、説明、承認等の手間が重くなってしまい、会社の迅速な意思決定の妨げとなるリスクがあります。

また、事業に携わらない一般の方の中には、配当などの投機を目的とし会社経営にあまり詳しくない株主も大勢います。こうした株主がたくさんいる場で、会社の重要な意思決定を行おうとすると、かえって混乱を招き、このこともまた迅速な意思決定を妨げるリスクの1つとなります。

ですから、取締役会を設置することにより、あらかじめ株主の承認を得ずに議決できる事項を定めておくことができるんですよ。
小野弁護士
小野弁護士
その他に、取締役会を設置すると、対外的にしっかりとした会社という見方をされるので、会社の信用度が上がるのもメリットのひとつです。
小野弁護士
小野弁護士

T社長
T社長
取締役会の設置は、今後ビジネスを拡大していくにあたって、メリットが多そうです!しかし、取締役会を設置すると会社にメリットはありますが、株主にとってはデメリットな気がします。取締役会を設置した場合の、株主にとっての具体的なデメリットには、どのようなものがありますか?

株主のデメリットですね。例として 、役員報酬の増加が挙げられます。取締役会は先程お話しした通り、3人以上の取締役が必要です。会社によっては、役員の増加に伴い、支払うべき役員報酬も増加してしまいます。 このことは、会社に利益を上げてほしい株主にとってはデメリットです。

また、会社にとっては株主の承認なしで決定できる事項が増える半面、株主総会で決定できる事項が減ってしまうため、経営に積極的に参加したい、いわゆる口出しをしたい株主にとってもデメリットといえますね。
小野弁護士
小野弁護士
T社長
T社長
取締役会の設置は、会社にとってはメリットが大きい反面、株主にとってはデメリットもあるんですね。なんだか、取締役会の基本 が少し理解できた気がします!
取締役会と株主総会との違い

取締役会と株主総会の違いをまとめると、下記の表となります。見比べてみると、両者は似て非なる機関ということが分かります。取締役会設置会社の場合は、経営に関する決定は取締役会が行い、その取締役会の監督を取締役の選任・解任する権利のある株主総会が行うイメージです。

取締役会 株主総会
構成 最低3名の取締役 株主
決議事項 業務執行に関する事項 会社に関する一切の事項(ただし、取締役会設置会社の場合、法律や定款定められた事項のみ決議)
決議要件 原則、過半数の出席、過半数の賛成 決議する議案によって異なる
招集手続き 原則として1週間前まで

非公開会社:ケースによっては、1週間前またはそれを下回ることができる

(会社法2991項参照)
議事録の残し方

本店に10年間保管

(本店:登記簿上の事業所を指します。

支店:本店から離れた場所にある事業所で、登記がされているものを指します。)

本店に10年間保管+支店にも5年間コピーを保管

(本店:登記簿上の事業所を指します。

支店:本店から離れた場所にある事業所で、登記がされているものを指します。)

 


取締役会では、どんなことを決める?
(取締役会の決議事項の種類・内容)

法定決議事項

T社長
T社長
取締役会では、具体的にどのようなことを決められるんですか?
次は決議事項についてですね。まずは、法定決議事項についてお話しします。会社法362条2項で定められている取締役会の職務は、以下の3つです。

①業務執行の決定
②取締役の職務執行の監督
③代表取締役の選定と解職

しかし、実際の取締役会の仕事は多岐にわたります。特に①の業務執行の決定は、経営をしていくうえで決定しなければならない場面が多々あると思います。重要ではない議案まで、その都度、取締役会を開催し、取締役の同意を得るとなると、かえって迅速な経営判断が難しくなってしまいます。
小野弁護士
小野弁護士
そこで、実際のビジネスでは、一部の議案の決定を代表取締役や業務執行取締役に委任して、簡易迅速に経営判断をするケースが見られます。しかし、取締役会を開催せずに、代表取締役や業務執行取締役にすべての議案を決定させて良いわけではありません。会社法362条4項で定められている以下の8つの事項については、取締役に決定を委任できないんです。これを、『法定決議事項』といいますよ。

1.重要な財産の処分および譲受け(会社法362条4項1号)
2.多額の借財(会社法362条4項2号)
3.支配人、その他の重要な使用人の選任と解任(会社法362条4項3号)
4.支店、その他の重要な組織の設置、変更、廃止(会社法362条4項4号)
5.社債の総 額、その他社債の募集に関する重要な事項
6.取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備(会社法362条4項6号)
7.定款の定めに基づく役員責任の免除(会社法362条4項7号)
8.その他の重要な業務執行 (会社法362条4項柱書)

上記で紹介した法定決議事項は、どれも会社の重要な意思決定であり、これらは取締役会で慎重に決定してくださいね。というものです。
小野弁護士
小野弁護士
T社長
T社長
会社法で決められているから法定決議事項なんですね。そのほかにも取締役会で決定できるものはあるんでしょうか。

そうですね。そのほかの決議事項としては、法定決議事項(会社法362条4項)以外の、個別の法律で決められているものがありますよ。
例えば、公開会社でない場合の株式の譲渡は、株式を譲渡するときに株主総会で譲受人を決定(「承認」)し、決定をしない場合には株主総会が譲受人を指定する必要がありますが、取締役会設置会社の場合は取締役会が当該株式を取得する譲受人を決定し、決定しない場合には取締役会が譲受人を指定すると定められています(会社法136条以下参照)。
その他にも、株式の分割や、株式の発行、 株主総会の日時・開催場所・目的、取締役の競合取引の承認、取締役の責任の一部の免除(定款で定めのある場合) など、取締役会で決議できる事項はたくさんあります。
小野弁護士
小野弁護士

承諾と決議との違い

T社長
T社長
これだけたくさんのことを決議できると、株主は面白くないのかな?とも思います。取締役会で決議をするときに、内容に応じて注意点はあるんでしょうか?

そうですね。例えば、実際に取締役会を設置した後、なにか決定したい議案があった場合、『決議事項』となる議案と『承認事項』となる議案に分かれるケースがあります。
一般には『決議』も『承認』も同じような使い方がされるのですが、法律で明確に区分がされていないため、『決議』は取締役会だけで完結できる内容であり、『承認』は株主総会で承認されて初めて完結できる内容と使い分けられるケースもあります。
小野弁護士
小野弁護士
T社長
T社長
株主総会で承認を得ないといけない議案を、取締役会だけで決議してしまうと大変なことになりそうですね…

そうですね。トラブルを防止する観点から、自社において『決議や承認という言葉が、どういう意味で使われているのかな?』とか、それを踏まえ、議案ごとに『これは決議事項かな?それとも承認事項かな?』と精査することが大切だと思います。
小野弁護士
小野弁護士
決議と報告との違い

ここまでは、決議事項や承認事項についてお話してきましたが、その他に『報告事項』というものもあります。報告事項とは、取締役会を構成する取締役が、取締役会に対して報告を義務付けられる事項です。会社法363条には、報告を行うべき取締役について、『代表取締役』と『取締役会の決議で選定された業務執行取締役』の2つが挙げられています。つまり、社長兼代表取締役であっても、取締役会への報告義務はあるということです。

 

『報告事項』は言葉のとおり、取締役会に報告しさえすればよく、その事項を取締役会等で決定する必要はありません。この点について、決議事項や承認事項とは取り扱いが異なります。

具体的には、取締役は、3か月に1回以上、自己の職務執行状況の報告を取締役会に対して行うよう、会社法3632項で定められています。


取締役会で決議する際には、どういう手続を踏めばいい?
(取締役会決議に関連する会社法上のルール)

決議の要件

T社長
T社長
取締役会でなにかを決議するときも、多数決の原則みたいなものがあるんですか?

そうですね。取締役会の決議要件(=議案)も出席した取締役の過半数です。過半数というのは、3人いれば2人、10人いれば6人というように、半数を超える状況を指します。
小野弁護士
小野弁護士

T社長
T社長
たとえば、賛成と反対の人数が同じな場合はどうなりますか?

過半数の要件を満たしていないため、その議案は可決できなくなります。ま、た、この『過半数』という要件は加重することはできますが、軽減することはできないんです。たとえば、決議要件を5分の4以上とすることはできても、5分の2以上とすることはできません。
小野弁護士
小野弁護士

T社長
T社長
過半数以上が原則なんですね。例えば、取締役が10人いたとして、本当なら6人の賛成がないといけないところ、3人の賛成しか得られなそうな場合、出席する取締役を5人にすれば、3人の賛成でも決議することができますか?

決議要件のなかには、議決数とは別に『定足数』の決まりもあります。簡単に言うと、『定足数』とは、取締役会を開くために最低限必要な取締役の数についてのルールです。原則は、取締役の過半数が出席しなければならないと会社法で定められていますよ。なので、10人の取締役がいる場合には、6人以上が参加しなければいけません。

ちなみに、もし、10人中6人の取締役が出席して取締役会を開いた場合は、そのうち4人以上の賛成をもって可決することができます。
小野弁護士
小野弁護士

決議の要件を欠くと、どうなる?

T社長
T社長
決議要件には、参加人数と賛成人数の2つが大切なんですね。たとえば、取締役会の決議をしないで、勝手に多額の借金をした場合はどうなるのでしょうか。

取締役会の決議を経ずにした契約は、相手がそのことを知らなかった場合は基本的に有効といわれています。取締役会の決議というのは、あくまで会社の中での制約なので、内部の制約が破られたからといって契約が無効になると、契約の相手が守られないからです。ちなみに、契約が有効であることと、取締役の責任は別物なので、決議要件を満たすことは重要なポイントですよ(最判昭和40年9月22日参照)。
小野弁護士
小野弁護士

決議って省略できる
(みなし決議、省略決議)

T社長
T社長
取締役会で決議できる事項ってたくさんありますよね。いちいち取締役会を開催するのって大変なイメージがあるのですが、もっと簡単に行う方法ってあるのでしょうか?
決議を省略する方法としては、『みなし決議』が考えられますよ!いわゆる書面決議と呼ばれる方法で、取締役が物理的に集まらずに決議する方法です。みなし決議ができる旨を定款で定めて、議案について取締役全員が書面やメールで賛成し、監査役が異議を述べないことが必要です。
小野弁護士
小野弁護士
T社長
T社長
取締役の全員が賛成するような議案がある時には 、すごく便利な方法ですね!
はい。最近では感染症をきっかけにオンラインによる働き方も多く普及しているため、みなし決議はビジネスをスムーズに進めるための有効な手段です。
小野弁護士
小野弁護士
取締役会とリモート(オンライン)の活用
オンラインを活用して、取締役会をリモートで行うことも可能です。次の章でご説明しますが、取締役会議事録の作成について定める会社法施行規則では、取締役会開催場所に存在しない取締役について明記されており、会社法は取締役会の開催場所に存在しないが、取締役会には参加する取締役を想定していると考えることができます。

(会社法施行規則10131号括弧書き)

 

オンライン開催にあたっては、①協議や意見交換が自由にでき、相手の反応がよくわかること、②各取締役の音声や画像がすぐにほかの取締役に伝わる、この2点を実現でき、その時々に適した意思表明がお互いにできる仕組みが大切です。ビデオ開催が一般的ですが、例えば電話で取締役会を行う場合も、通話をスピーカー状態にして、取締役全員が発言を認識して、会議中意見交換がいつでもできれば問題がないと考えられます。

 

みなし決議はそもそも取締役会が開催されませんが、リモートの取締役会では取締役会が開催されている点が、両者の違いです。リモート開催を行うメリットとしては、移動費用の軽減や感染症予防、録画機能の活用、資料を各自がダウンロードすることによる、ペーパーレス化の促進などがあげられます。


取締役会における決議の方法や流れ

招集権者

T社長
T社長
取締役会を実際に開催するときの流れが知りたいです。まず、取締役会の開催はだれが決定して、だれが各取締役を集めるのでしょうか。
原則は各取締役が招集することができますが、定款や取締役会で招集する取締役を定めた場合には、その取締役が招集することになりますよ。
小野弁護士
小野弁護士

議事進行・運営

T社長
T社長
取締役会は決議事項の要件は厳しいけれど、開催の手順は難しくなさそうですね。実際に取締役会が開催されたら、議事進行や運営はどうしたらいいですか?
実は、取締役会の議事進行については決まりがなく、決議したい議案を提示して、自由に議論し、最終的には決議を行えばいいのです。例えば、必要に応じて議長を選任してもいいですし、補助者として弁護士や公認会計士等の外部専門家が参加することもokです。
小野弁護士
小野弁護士

議事録の作成・保管

T社長
T社長
取締役会の設置は正直難しいイメージがありましたが、少しハードルが下がりました。ちなみに、取締役会で取り上げられた話や、決定された内容はどうやって残しておくのでしょうか?
取締役会の内容については『取締役会議事録』を作成して、出席した取締役や監査役が、最後に自筆による署名をするか、または記名押印する必要があります。議事録に記載する内容は、会社法施行で定められていますが、要点を抑えれば難しくはありませんよ。議事録は一定の保管義務があるため、その点にも注意する必要があります。
小野弁護士
小野弁護士
取締役会への代理出席や、取締役以外の者の同席の可否
T社長
T社長
先程、弁護士が補助として参加できると伺いましたが、たとえば部下を代理人にすることは可能でしょうか?

残念ながら、取締役会において代理人を立てることはできません。取締役と会社の契約関係は委任契約で、会社のために取締役個人が任務を遂行することが必要です。会社の重要な意思決定は、取締役その人だからこそ、任されている業務なんです。あらかじめ賛成・反対の意思が固まっていたとしても、会議中の発言や意見交換も、取締役だからこそできる重要な業務であって、ほかの方に代理させることはできないんです。
小野弁護士
小野弁護士
T社長
T社長
そうなんですね。だからこそ、みなし決議やオンライン開催を活用する意義がありそうです!

議事録って何を書くの?
(議事録に残す情報の具体例、作った議事録の運用方法)

T社長
T社長
そういえば、小野先生。先程の議事録に記載する内容が気になります。具体的にはどのよう内容なのでしょうか?
議事録に記載する内容は会社法施行規則に定められているのですが、具体的には、
①日時と場所
②報告事項と質疑応答
③決議事項とその内容・結果
④監査役等の意見がある場合はその意見
⑤出席した取締役の氏名
⑥定款やそのほかの方法で議長を定め、議長が存在する場合には議長の氏名
⑦議事録を作成した者の氏名(一般社員でもOK)
など
が挙げられます。

特に、②と③はだれが後から見てもわかるように、できる限り具体的に残しておくことがポイントです。また、法律上の決まりはありませんが、わかりやすく表題をつけることが一般的です。
小野弁護士
小野弁護士
T社長
T社長
質疑応答などの議事の内容をある程度正確に残すという点でも、録画機能を使えるオンライン開催があると便利ですね。そのほかにルールはありますか?

そのほかですと、議事録の作成時期の質問をいただくこともありますが、実は議事録の作成時期に決まりはないんです。しかし、実際には開催日と作成日が同じ日になっているケースが多くあります。 議事録は書面で作成することも。電磁的記録で作成することも可能ですよ。また、作成した議事録は取締役会が開催された日から、10年間会社の本店に保管する必要があります。
小野弁護士
小野弁護士
T社長
T社長
10年間…けっこう長い間保管するんですね。議事録ってだれでも見ることができるのでしょうか?
取締役会議事録には、会社の重要な決定事項や経営戦略、情報が資料として残されているため、だれでも見られるわけではありません。会社法で、株主は必要に応じて、いつでも取締役会議事録の閲覧または写しを会社に対して請求できると定められています。いつでもといいますが、これらの請求ができるのは会社の営業時間中です。そのほかにも、株主とは違い裁判所の許可が必要にはなりますが、債権者や親会社の株主も取締役会議事録の閲覧または写しを請求することができます。
小野弁護士
小野弁護士
T社長
T社長
じゃあ、株主なら比較的簡単に議事録を見れるんですね。
この辺りの法文は複雑なのでやや誤解されやすい所ですが、1つだけ注意すべき所があります。実は、裁判所の許可なく請求できるのは、一部の取締役会設置会社(=会計参与のいる非公開の取締役会設置会社)だけであり、その他の取締役会設置会社においては、裁判所の許可が必要になるんです(会社法327条2項、371条3項参照)。

その他の取締役会設置会社には、取締役の職務を監査・監督 する監査役や監査委員がいるため、株主に簡単に取締役会議事録を見せなくても問題がないので、裁判所の許可を必要としていると考えることができますよ。

ですから、例えば、上場している会社は公開会社に該当するので、上場会社の株主が取締役会の閲覧・謄写をする際には、裁判所の許可が必要になるということですね。
小野弁護士
小野弁護士
T社長
T社長
なるほど、聞いておいてよかったです。

取締役会について弁護士に相談できますか?
(外部弁護士に依頼することのメリット)

T社長
T社長
小野先生!取締役会について理解が深まりました。でも、実際に自分だけで設置や開催をするのには不安が残ります…。
そうですね。取締役会を設置するメリットとして『会社の対外的な信用度のアップ』とお話ししましたが、たとえば取締役会の適切な設置・運営が行われていない場合、前述のメリットが得られないというリスクがあります。また、不透明な運営が行われ、会社に損害が発生した場合、株主や第三者から取締役が責任を問われる可能性もあります。
小野弁護士
小野弁護士
T社長
T社長
取締役会はビジネスを加速させる半面、しっかり運営しないとリスクも大きそうです。取締役会の設置や、実際の運営について弁護士に依頼することは可能でしょうか?
はい、可能です。定款の変更、議案の確認、招集方法、運営や決議、取締役会の同席といった様々なことをお手伝いできます。取締役は会社に対する責任が大きいため、取締役会を適切に運営し、損害賠償リスクを低減する観点からも、ぜひ一度ご相談ください。法律的な相談以外に、ビジネス目線でのアドバイスをすることも可能です。
小野弁護士
小野弁護士

まとめ

これまでお話しした通り、取締役会を活用することによって、会社のビジネスをスムーズにすることが可能です。取締役会をうまく活用するためには、適切な設置・運営をすることが重要です。適切な設置・運営がなされないと、取締役の負うリスクも大きくなってしまいます。外部の弁護士の専門知識を活かしながら、取締役と専門部署、弁護士で連携して取り組むことがポイントです。
小野弁護士
小野弁護士
T社長
T社長
たしかに、最近では議事録を作成する無料のサービスやシステムもあると聞きますが、取締役会の設置や運営については、自社だけで進めるよりも、弁護士がいてくれると心強いですね!今日はありがとうございました!
いつでも相談してくださいね!T社長のビジネスがさらに大きくなるよう、一緒に取り組んでいきましょう!
小野弁護士
小野弁護士

■この記事の内容は、「わかりやすさ」と、「要はどうすればいいか」にフォーカスして作成しています。そのため、法律の教科書的な内容とは違う場合があります。このような目的をご理解のうえ、お読みいただければと思います。社長の実際のお悩みを解決するために、ぜひ専門家にご相談ください。

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WRITER
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
企業顧問を専門とし、社長からの相談に、法務にとどまらずビジネス目線でアドバイスを行う。
企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約書をレビューする「契約審査サービス」を提供している。
また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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